こんにちは。日頃、皆さまはどんなWebブラウザをお使いでしょうか。プライベートではお好きなものを状況にあわせてご利用かと思いますが、オフィスで使うブラウザはInternet Explorer(以降IEと記述)一択、という方が多いのではないでしょうか。
IEは長年、Windowsの標準ブラウザと利用されてきました。企業内で使われる業務アプリケーションの多くがこのブラウザにあわせて開発されており、現在でもその多くが稼働しています。
そんな馴染みのあるブラウザIEについて最近、大きなニュースが駆け巡ったことはご存知でしょうか。
マイクロソフト社がIE離脱を推奨!?
2019年の2月、Microsoftの「WIndows IT Pro Blog」に「Internet Explorer を標準ブラウザとする危険性」として以下のような記事が掲載されました。
この記事では
- IEが互換性のために独自仕様を保ち続けていること
- このため、現行のIEでも古いIE向けWebコンテンツが問題なく稼働していること
- 対して、近年のWebサイトはIEでテストされていない場合もあること
などが言及され、IEを標準ブラウザに設定することの危険性が解説されています。
使用禁止とまではいきませんが、少なくとも標準ブラウザには推奨できないという話がリリース元のMicrosoftから出たことで、業界に大きな衝撃が走りました。
モダンブラウザの実力
旧来のシステムがある企業では、標準ブラウザをIE以外に設定した場合にこれまで運用してきたアプリケーションが使えなくなる可能性があります。ですので、上記の記事はちょっと暗い気持ちになってしまうニュースですよね。しかし、これを機会にIE以外を使うとどんな良いことがあるのか、と明るい面を探してみるのはいかがでしょうか。
一般に、IEよりもChromeやFirefoxなどをはじめとする「モダンブラウザ」のほうが高速だと言われています。今回は弊社製品を使用して実際のところを調査してみました。
性能比較 – IE vs Chrome
IEの比較対象を世界で一番利用されているブラウザのChromeに定め、2つのブラウザの性能を確認しました。弊社のJavaScriptライブラリ「Wijmo(ウィジモ)」を使用して以下のサンプルを作成し、IEとChrome上で動作させてデータの作成や設定、フィルターやソートにかかる時間を計測します。
検証サンプル
検証方法
ブラウザでサンプルを表示し、ページをリロードしてからソートやフィルタリングなどの各処理を実行して、計3回の平均処理時間を測ります。なお、この際の検証環境は以下をご参照ください。
検証環境
Azure Virtual Machinesで検証
スペック | Standard D2 (2 vcpu、7GB メモリ) |
---|---|
イメージ | Windows 10 Enterprise for Virtual Desktops Preview, Version 1809 |
ディスク | OSディスクの種類:Standard SSD(既定) |
ネットワーク | 受信ポート:RDP |
ブート診断 | オフ |
検証結果
IE vs Chrome、性能比較結果は以下の通りです。なお、ここでの「速度比」はIEに対するChromeの速度を示します。例えば「200%」は、ChromeがIEより2倍高速である、という意味です。
データ数:10,000行×100列 の場合
処理内容 | IE (ms) | Chrome (ms) | 速度比 |
---|---|---|---|
データ作成 | 251 | 217 | 116% |
データ設定 | 318 | 225 | 141% |
フィルター | 280 | 215 | 130% |
ソート | 200 | 94 | 213% |
非連結グリッド | 5,345 | 1,163 | 460% |
データ数:100,000行×100列 の場合
処理内容 | IE (ms) | Chrome (ms) | 速度比 |
---|---|---|---|
データ作成 | 2,729 | 2,736 | 100% |
データ設定 | 764 | 511 | 150% |
フィルター | 1,817 | 956 | 190% |
ソート | 2,247 | 814 | 276% |
非連結グリッド | 57,379 | 11,759 | 488% |
この測定結果から、以下のようなことがわかりました。
データ設定 | Chromeの方が約1.5倍高速 |
---|---|
フィルター | Chromeの方が約1.3〜2倍高速 |
ソート | Chromeの方が約2〜3倍高速 |
非連結グリッド | Chromeの方が約4〜5倍高速 |
まずは標準ブラウザの設定から
Chrome、かなり速いですね!と言っても、多くの企業にとって長年利用してきたIEの採用を取りやめることは大きな決断です。また、旧来の業務システム運用を考えた場合、取りやめたくてもやめられない、という方も沢山いらっしゃるかと思います。
そんな場合はマイクロソフト社がブログで提唱しているように、まず「IEを標準ブラウザにしない」ところから始めてみるのはいかがでしょうか。モダンブラウザと旧システムの組み合わせだけれど、意外にしっかり動くなんてこともあるかもしれません。
新しいブラウザは高性能でいいことずくめです。ここはひとつ勇気をもって、そのIE、切り替えてみませんか?