Microsoft Build 2024で発表されたWindowsデスクトップ開発まわりの情報

普段のお仕事に役立つ普遍的なプログラミングTIPSや、業界で注目度が高い最新情報をお届けする「編集部ピックアップ」。
今回はMicrosoft Build 2024で発表されたWindowsアプリケーション開発に関連する情報を紹介します。

2024年5月21日~23日にマイクロソフトの開発者向けイベント「Microsoft Build 2024」が開催されました。

事前にセッション情報をご覧になった方はすでに把握済みかと思いますが、最近IT業界のトレンドを席巻し続けている生成AIをはじめとするAIテクノロジー関連のセッション(Azure AI ServiceやAzure AI Studio、Microsoft Copilotやなど)が多数を占めていたかと思います。

その中でも本ブログ読者が一番関心があるであろう、Windowsデスクトップ開発においても少しですが新しい情報がありましたので、本記事ではその辺りをピックアップして紹介します。

Windows Copilot Runtime

まず、AIを用いたWindowsアプリケーション開発に関連がありそうなモノとして「Windows Copilot Runtime」の発表がありました。

Windows Copilot Runtimeには、Windowsに付属する40を超えるオンデバイスAIモデルを利用したAPIセット「Windows Copilot Library」が含まれています。Windows Copilot Libraryには、Windows上のローカルで直接実行されるモデルによって駆動される、次のAI対応APIが含まれています。

  • Phi Silica(ファイ シリカ)
    Windowsローカルで実行可能なSLM(小規模言語モデル)。ニューラル処理ユニット (NPU) を搭載した Windowsデバイス向けに特別に設計されており、テキスト生成機能と会話機能をデバイス上で直接実行するAPI
  • OCR
    画像内のテキストを認識し、スキャンされた紙のドキュメント、PDFファイル、デジタル カメラでキャプチャされた画像など、さまざまな種類のドキュメントを、ローカル デバイス上の編集可能で検索可能なデータに変換するAPI
  • Studio Effects
    背景のぼかし、アイコンタクト修整、自動フレーミング、ポートレートライト修整、クリエイティブフィルター、バックグラウンドノイズを除去するための音声フォーカスなど、AIを利用する特殊効果を適用するAPI
  • Recall
    ドキュメント、画像、Webサイトなど、過去のアクティビティからすばやく検索対象を見つけるAPI

これらのAPIは6月にリリース予定の新しいWindows App SDKに含まれるようです。さらに、ライブキャプション翻訳、セマンティック検索、取得拡張生成(RAG)、テキスト要約など、さらに機能が追加される予定になっています。

プリセットのAIモデルを使えるAPIが提供されるということで、いよいよ本格的にAIを搭載したWindowsアプリケーションの開発が始まりそうですね。

また、Microsoft Build 2024に先駆けて紹介されていたAIを搭載したUIコンポーネントセット「.NET Smart Component」もまだ実験段階かつBlazor、MVC、Razor Pagesにのみ対応ということですが、WPFやMAUI、Windows Formsにも対応が予定されており、今後どのようになっていくのか気になるところです。

WinUI 3とWPF

WinUI 3は、WPFと共にWindowsアプリケーション開発における推奨UIプラットフォームとされ、WinUI 3とWPFには引き続き投資を実施すると言及されています。

Continuing investments in WinUI3 and WPF to help developers build rich, modern Windows applications  

Windows is an open and versatile platform that supports a wide range of UI technologies. If you are looking to develop native Windows applications using our preferred UI development language, XAML, we recommend using either WinUI 3 or WPF. 

https://blogs.windows.com/windowsdeveloper/2024/05/21/unlock-a-new-era-of-innovation-with-windows-copilot-runtime-and-copilot-pcs/

最新のVisual Studioでは、WinUI 3アプリケーションを開発するために必要なワークロードをインストールできるようになっており、導入しやすくなっています。

Visual Studio 2022

また、最新のWPFではWindows 11のテーマをサポートしており、WPFアプリケーションの外観と操作性を今までよりも簡単に導入することができるようになっています。

Windows 11 theme support makes it easy to modernize the look and feel of your WPF applications 

WPF is popular, especially for data-heavy and enterprise apps. We listened to your feedback and are committed to continuing investments in WPF. With the latest updates to WPF, we have made it easier than ever to modernize the look and feel of your app through support for Windows 11 theming. 

https://blogs.windows.com/windowsdeveloper/2024/05/21/unlock-a-new-era-of-innovation-with-windows-copilot-runtime-and-copilot-pcs/

実際にどのような外観になるのかは、以下の「WPF Gallery」で確認することができます。

WPF Gallery Preview
WPF Gallery Preview

上記のセッションやブログでは、WinUI 3とWPFの使い分けにも言及されています。WinUI 3はメディアとグラフィックスに重点を置いたコンシューマーアプリケーションや商用アプリケーションに最適で、WPFは利用可能な商用やオープンソースのライブラリの大規模なエコシステムの恩恵を受けれるため、エンタープライズおよびデータ指向型アプリケーションに最適とされています。

WinUI 3 includes a modern native compositor and excels at media and graphics-focused consumer and commercial applications. WPF has a longer history and can take advantage of a deep ecosystem of commercial products as well as free and open source projects, many of which are focused on enterprise and data-intensive scenarios.

https://blogs.windows.com/windowsdeveloper/2024/05/21/unlock-a-new-era-of-innovation-with-windows-copilot-runtime-and-copilot-pcs/

ということで、業務アプリケーション開発としてはWPFが主役になるということになりそうですが、数多くの業務アプリケーションが開発されてきたWindows Formsでは、.NET 9でダークモードやデータバインディング、非同期処理など新機能の実装が予定されており、こちらも引き続き使い続けることができそうです。

さいごに

Microsoft Build 2024で発表された内容は以下の公式ページからご覧いただけます。

また、日本でのオンラインイベント「Microsoft Build Japan」も予定されています。

さいごに弊社製品の紹介です。WPFやWinUIアプリケーション開発で使える .NETコンポーネント製品はこちらです。

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