近年、社会的ニーズやユーザビリティ向上の観点から、Web開発においてアクセシビリティに配慮することの重要性が高まっています。
その背景のひとつとして、2024年に施行された「改正障害者差別解消法」により一般企業に対しても「合理的配慮の提供」が義務化されたことが挙げられます。
また、直近ではJavaScriptフレームワーク「Angular」においても「Angular Aria」というアクセシビリティに関連する機能が追加されました。こうした動向からは、Angularを利用するような高機能なWebアプリケーションにおいても、アクセシビリティを意識する機会が増えていることがうかがえます。
JavaScript UIライブラリ「Wijmo(ウィジモ)」でも、これまで継続的にアクセシビリティの向上に取り組み、最新バージョン「2026J v1」では主要なコントロールがウェブアクセシビリティの国際基準「WCAG 2.2」のレベルAAに対応しました。
本連載ではWijmoの具体例を通じて、ウェブアクセシビリティやWCAGへの理解を深めます。今回はその前編として、まずWCAGの概要と、対応が求められている背景について解説します。
ウェブアクセシビリティとは
ウェブアクセシビリティとは、Webコンテンツ上の情報やサービスに対するアクセスのしやすさを意味します。特に障害のある方がWebコンテンツを問題なく利用できるよう考慮する際に重要となる概念です。また、ウェブアクセシビリティに配慮することで、障害の有無に関わらず多くの方にとって利用しやすいコンテンツとなることが期待できます。
具体例
- 視覚に障害のある方がスクリーンリーダー(読み上げソフト)を使用してWebコンテンツを利用した際に十分な情報が得られる。
- 聴覚に障害のある方が映像コンテンツを利用する際に、字幕や手話などの視覚的な要素が提供されている。
- 視覚や運動機能に障害がある方がマウス操作が困難な場合に、キーボード操作でコンテンツを利用できる。
WCAGとは
「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」は、「W3C(World Wide Web Consortium)」が定めているウェブアクセシビリティに関するガイドラインで、世界各国においてウェブアクセシビリティの基準として採用されています。
WCAGは1.0の公開以来更新が続けられており、2026年6月現在の最新バージョンは2.2。次バージョンの3.0も開発中となっています。
WCAGは4つの「原則」とその下に並ぶ13の「ガイドライン」から成り、各ガイドラインには「達成基準」が設けられています。また、各達成基準にはそれぞれ「適合レベル」が定義されています。
たとえば、「WCAG 2.2のレベルAAに準拠」するためには、適合レベルがAおよびAAに設定されている達成基準を全てクリアする必要があります。
WCAGの4つの原則
| 知覚可能 | 情報及びユーザーインターフェースは、知覚できる方法で提示できなければならない。 |
|---|---|
| 操作可能 | ユーザーインターフェース及びナビゲーションは、操作可能でなければならない。 |
| 理解可能 | 情報及びユーザーインターフェースの操作は、理解可能でなければならない。 |
| 堅牢 | コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢でなければならない。 |
WCAGの適合レベル
| A | 最低限達成すべきレベル |
|---|---|
| AA | 一般的に推奨されるレベル(日本の公的機関で求められるレベル) |
| AAA | 発展的なレベル(実現が困難なケースもある) |
WCAGの詳しい内容については、以下のドキュメントをご確認ください。
Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2
日本国内での動向
障害者差別解消法
ウェブアクセシビリティに関連する日本国内の法律として「障害者差別解消法」があります。
この法律では、行政機関や事業者(一般企業を含む)に対して「不当な差別的取扱いの禁止」「合理的配慮の提供」「環境の整備」が求められています。
| 行政機関等 | 事業者 | ||
|---|---|---|---|
不当な差別的取扱いの禁止 | 障害のある方に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止する。 | 義務 | 義務 |
| 合理的配慮の提供 | 障害のある方から「社会的障壁の除去の要望」があった場合に、負担が過重でない範囲で対応すること。 | 義務 | 義務(2024年4月1日以降) |
| 環境の整備 | 不特定多数の障害のある方を主な対象とした事前の改善措置 | 努力義務 | 努力義務 |
ウェブアクセシビリティへ配慮することは、この中の「環境の整備」に該当すると考えられ、事業者に対しては「努力義務」が課せられています。また、2024年4月1日に改正法が施行されたことにより、事業者に対してこれまで「努力義務」とされていた「合理的配慮の提供」が「義務」となりました。
こうした動向からも、ウェブアクセシビリティに対する社会的な要請が高まっていることがうかがえます。
総務省が定めるガイドライン
日本ではウェブアクセシビリティの向上を目的として、総務省が「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を公開しています。このガイドラインの対象は公的機関(国や地方公共団体等)のWebサイトですが、一般企業がアクセシビリティに取り組むうえでも一つの指標となり得ます。
このガイドラインは、日本国内の産業規格であるJIS X 8341-3:2016に則っており、その内容はWCAG 2.0と同等です。
WCAG2.0 = 国際規格 ISO/IEC 40500:2012 = 日本産業規格 JIS X 8341-3:2016
また、このガイドラインでは適合レベルAAへの準拠が求められており、すなわち「WCAG 2.0レベルAA」に準拠することが求められていることになります。
なお、2025年9月には国際規格であるISO/IEC 40500がWCAG 2.2に一致するように更新されており、近い将来JIS X 8341-3もWCAG 2.2に一致する形への更新が予定されています。そのため、今の段階からWCAG 2.2のレベルAAに準拠しておくことが望ましいと考えられます。
さいごに
今回は、ウェブアクセシビリティの国際基準であるWCAGについて、その概要や対応が求められている背景を解説しました。
ウェブアクセシビリティは今後も重要性が高まるとともに、利用環境や技術の発展にともなって求められる対応も変化していくことが予想されます。しかしながら、高機能なUIに対して基準を満たすように対応することは容易ではありません。
そこで、あらかじめWCAGに配慮して設計されたUIライブラリであるWijmoを利用することで、最新の規格に準拠するアクセシビリティを備えたWebコンテンツの開発にかかる工数の削減が期待できます。
なお本連載の後編では、WijmoにおいてWCAGの基準がどのように達成されているか、具体例を交えてご紹介します。ぜひこちらもご覧ください。
製品サイトでは、Wijmoの機能を手軽に体験できるトライアル版も公開しておりますので、こちらもご確認ください。
また、ご導入前の製品に関するご相談、ご導入後の各種サービスに関するご質問など、お気軽にお問合せください。
