今回は、Next.jsの開発元として知られる「Vercel」が提供するクラウド開発プラットフォームをご紹介します。Vercelを使えば、フルスタックなWebアプリケーションを簡単に構築できます。
はじめに
「Vercel(バーセル)」という企業が提供する、クラウド開発プラットフォームをご存知でしょうか?WebアプリUI生成サービス「v0(ブイゼロ)」や、React用のWebアプリケーションフレームワーク「Next.js(ネクストジェイエス)」の開発元として、フロントエンド界隈では広く知られていますが、実はフロントエンドだけでなく、バックエンドAPIまで含めたフルスタックなWebアプリケーションを簡単に構築できる環境を提供しています。
世界中のフロントエンド開発者をターゲットにしたアンケート調査「State of JavaScript」によると、Vercelは、2024年、2023年ともに、Hosting Services部門とServerless Runtimes部門でAWSに次ぐ2位を獲得しており、世界中のフロントエンド開発者に広く利用されているプラットフォームであることがわかります。
今回は、注目を集めるVercelのクラウド開発プラットフォームについて、その特長と基本的な使い方をご紹介します。
目次
Vercelとは

Vercelは、米国発のIT企業で、「Customer-first, experience-first, AI-first」という理念のもと、顧客体験を最優先に考えたWeb開発に注力しています。
同社が開発する「Next.js」は、Reactをベースにしたオープンソースのウェブアプリケーションフレームワークで、React公式ドキュメントでもReactアプリを作る際の推奨フレームワークとして紹介されており、事実上の公式フレームワークとしての地位を確立しています。さらに、2025年10月には、MetaからLinux Foundation傘下に移管された「React Foundation(React財団)」の運営委員会メンバーとしてVercelが参画し、Meta、Microsoft、Amazonと並んでReactエコシステムの進化に深く関わる立場となりました。
また、2024年からはAI駆動の開発ツール「v0」を提供し、大きな注目を集めています。v0は、デザインや自然言語の指示から高品質なReact/Next.jsコンポーネントを自動生成できる革新的なツールです。「プロフィールカードを作って」「ダッシュボードのUIを生成して」といった簡単な指示だけで、実装可能なコードが瞬時に完成します。これにより、AIを介してWebアプリケーションを構築するという新しい開発体験が実現し、フロントエンド開発の生産性が飛躍的に向上しています。
こうした、Next.jsやv0で構築したWebアプリケーションのデプロイ先として用意されているのが、Vercelが展開するモダンなクラウド開発プラットフォームです。このプラットフォームは、フロントエンド開発者がフルスタックアプリケーションを構築できる環境として設計されており、サーバーの煩雑な管理から解放されながら、高度なスケーリングとコスト効率の両立を実現しています。何よりも、GitHub連携をはじめとした強力なCI/CD機能が大きな特徴で、進化の早いWebアプリケーション開発において不可欠なDevOps環境が標準で用意されています。これにより、開発者はコードをプッシュするだけで自動的にビルド・デプロイが完了し、開発と公開に集中できる環境が整っています。
Vecelクラウド開発プラットフォームの特長
Git連携による自動デプロイ
コードをGitリポジトリ(GitHub、GitLab、Bitbucket、Azure DevOps Pipelines等)にPushすると、自動的にCI/CDパイプラインが起動し、本番環境やプレビュー環境へ瞬時にデプロイされます。プルリクエストごとに自動でプレビューURLが生成され、レビューや検証が容易になります。
サーバーレス関数
Node.js、Python、Goなど複数の言語をサポートし、面倒なインフラ管理が不要でAPIエンドポイントやバックエンドロジックを実装できます。必要なときだけスケールし、トラフィックの急増にも自動で対応します。
Fluid Compute
Fluid Computeは、従来のサーバーレス技術では活用しきれていなかったコンピューティングリソースを最大限に引き出す技術です。
従来のサーバーレスでは、リクエストに応じて起動したインスタンスが、データベースクエリやAPI呼び出しの結果を待つ間はアイドル状態となり、リソースが使われていない間も課金は続いていました。
Fluid Computeでは、このアイドル時間を他のリクエスト処理に再利用することで、1つのインスタンスで複数のリクエストを並行処理できます。その結果、処理効率とコスト効率の両方を大幅に向上させます。
Vercelマーケットプレイスからクラウドサービスをネイティブに統合
Neon(PostgreSQL)、Upstash(Redis)など多様なクラウドサービスを数クリックで統合。アカウント作成から環境変数の設定まで自動化され、すぐに開発を開始できます。
Vercelマーケットプレイスから利用可能なNeonについては、以下の記事で詳しく解説しています。こちらも併せてご覧ください。
Vercelを使ってみる
それでは、Vecelのクラウド開発プラットフォームを使ってみましょう。Vercelを利用するには、次のように新たにアカウントを作成するか、もしくはGitHubなどのアカウントを利用してアカウントを作成する方法があります。
今回は、GitHubのアカウントを利用して、無料のHobbyプランで試していきます。


プロジェクトの作成
アカウントを作成してログインすると、次のような画面が表示されます。GitHubアカウントで登録した場合、すでにGitHubとの連携は完了していますが、リポジトリへのアクセス権限の連携はまだ行われていません。リポジトリと連携するには、下記画像のオレンジ枠で囲まれた[Install]ボタンをクリックしてください。

ボタンを押すと、以下のダイアログが表示されますので、必要なリポジトリアクセス権限を追加してください。今回は、すべてのリポジトリのアクセス権を設定しています。

アクセス権を設定後、元のページに戻ると、下記画像の青枠部分のようにリポジトリを参照できるようになります。画像ではリポジトリが未作成のためリストには何も表示されていませんが、参照可能なリポジトリがある場合はリストに表示され、リポジトリを指定するとVercel上でデプロイが行われます。
今回は、既存のリポジトリからデプロイするのではなく、画像右側の「Clone Template」から、オレンジ枠で囲まれた「Next.js Boilerplate」を選択してプロジェクトを作成し、GitHub上にリポジトリを作成したうえで、Vercel上でデプロイを行います。

「Next.js Boilerplate」を選択後、以下のダイアログが表示されます。ここで作成するプロジェクト名(GitHubリポジトリ名)を指定し、[Create]ボタンを押します。今回はプロジェクト名には「vercel-crud-app」を設定しました。

プロジェクト(リポジトリ)が作成されると、Vercel上で自動的にデプロイが行われます。完了すると、以下のように「Congratulations!」と表示され、デプロイしたアプリケーションの管理画面(ダッシュボード)にアクセスできるようになります。

管理画面を確認すると、デプロイしたアプリケーションに関するさまざまな設定や状態監視(Observability)のほか、GitHubリポジトリへのリンクなど、Webアプリケーション開発に関わる多くの設定がこの画面上から行えるようになっています。
さいごに
今回は、Next.jsの開発元として知られる「Vercel」が提供するクラウド開発プラットフォームについてご紹介しました。State of JavaScriptの調査によると、フロントエンド分野のクラウド環境としてはAWSに次いで利用されており、非常に人気の高いサービスとなっています。まだ利用したことがない方は、本記事を参考にぜひ一度試してみてください。
次回の記事では、今回紹介した「Vercel」のクラウド開発プラットフォームを利用し、CRUD処理を行うWeb APIを実装していきます。こちらの記事もぜひご覧ください。
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無償のトライアル版や、ブラウザ上で手軽に試せるデモアプリケーションも公開しているので、こちらも是非ご覧ください。
