Azure Functions（分離ワーカーモデル）とDioDocsでExcelやPDFファイルを出力する（2）

前回に引き続き、本記事でもAzure Functions（分離ワーカーモデル）で「DioDocs（ディオドック）」を使用したC#関数アプリを作成して、ExcelやPDFファイルを出力する方法について紹介します。

Azure Functionsの分離ワーカーモデルについて
実装する内容
アプリケーションを作成
NuGetパッケージの追加
Azure Blob StorageとDioDocs for Excelを使うコードを追加
DioDocs for PDFを使う関数を追加
Azure Blob StorageとDioDocs for PDFを使うコードを追加
デバッグ実行で確認
Azureへデプロイ
デプロイしたアプリケーションを確認
さいごに

Azure Functionsの分離ワーカーモデルについて

従来、Azure Functionsでは「インプロセスモデル」を主に使用されていました。しかし、このインプロセスモデルは2026年11月10日でサポート終了がアナウンスされています。

また、インプロセスモデルでは .NET 8までがサポート対象になっており、.NET 9以降では「分離ワーカーモデル」を使用する必要があります。

実装する内容

Azure FunctionsアプリケーションでHTTPトリガーを使用する関数を作成します。関数の実行時にDioDocsを使用してExcelとPDFファイルを作成し、クエリパラメータで受け取った文字列を追加します。前回は作成したExcelとPDFファイルをFileContentResultで直接ローカルへ出力していましたが、今回は作成したExcelとPDFファイルをAzure Blob Storageへ出力するようにします。

アプリケーションを作成

以下のドキュメントを参考にAzure Functionsアプリケーションを作成していきます。

クイックスタート: Visual Studio を使用して Azure で初めての C# 関数を作成する

Visual Studio 2022でプロジェクトテンプレート「Azure Functions」を選択して［次へ］をクリックします。

プロジェクト名「DioDocsFileExportFunctionIsolatedApp2」を入力して［次へ］をクリックします。

Azure Functionsの追加情報を入力します。「Functions worker」は「.NET 8 Isolated (長期的なサポート)」を選択、「Function」は「Http trigger」を選択して［作成］をクリックします。

DioDocsFileExportFunctionIsolatedApp2プロジェクトが作成されます。

NuGetパッケージの追加

Visual Studioの「NuGet パッケージマネージャー」からDioDocsのパッケージDioDocs.Excel.ja、DioDocs.Pdf.jaをインストールします。

また、作成したExcelとPDFファイルをAzure Blob Storageへ出力するために、出力バインドでAzure Blob Storageを使用するので、必要なパッケージMicrosoft.Azure.Functions.Worker.Extensions.Storage.Blobsをインストールします。

Azure Blob StorageとDioDocs for Excelを使うコードを追加

Azure Blob Storageの出力バインドを設定するコードおよびDioDocs for Excelを使用してExcelファイルを作成するコードを追加して、Function1を以下のように更新します。

[Function("Function1")]
public async Task<UploadOutput> Run([HttpTrigger(AuthorizationLevel.Function, "get", "post")] HttpRequest req)
{
    _logger.LogInformation("C# HTTP trigger function processed a request.");

    string? name = req.Query["name"];

    string requestBody = await new StreamReader(req.Body).ReadToEndAsync();
    dynamic? data = JsonConvert.DeserializeObject(requestBody);
    name = name ?? data?.name;

    string Message = string.IsNullOrEmpty(name)
        ? "Hello, World!!"
        : $"Hello, {name}!!";

    MemoryStream outputfile = new();
    Workbook workbook = new();

    workbook.Worksheets[0].Range["B2"].Value = Message;
    workbook.Save(outputfile);

    byte[]? FileData = outputfile.ToArray();

    return new UploadOutput()
    {
        HttpResponse = new OkObjectResult("Excel File Uploaded."),
        OutPutFile = FileData
    };
}

public class UploadOutput
{
    [HttpResult]
    public required IActionResult HttpResponse { get; set; }

    [BlobOutput("output/result.xlsx", Connection = "AzureWebJobsStorage")]
    public byte[]? OutPutFile { get; set; }
}

今回はHTTPトリガーに対するHTTPレスポンスと、DioDocs for Excelで作成したExcelファイルをAzure Blob Storageに保存するための出力バインディングをUploadOutputクラス内でHttpResultとBlobOutput属性でそれぞれ定義します。そして関数Function1がUploadOutputオブジェクトを返すように設定しています。

なお、Blob Storageの出力バインディングはstringかByte[]しか使用できないので今回はByte[]を使用しています。なお、大きいサイズのファイルを保存する場合はこちらの出力バインディングを使用せずに関数内でBlobClientまたはBlobContainerClientを推奨する記載があります。

また、Blob Storageの出力バインディングを使用する場合には、現在以下の報告のようにEvent Gridで複数のイベントが発生する現象が確認されているので使用する際には注意が必要です。

DioDocs for PDFを使う関数を追加

ソリューションエクスプローラーからDioDocsFileExportFunctionIsolatedApp2プロジェクトを右クリックして［追加］－［新しい Azure 関数］を選択して、DioDocsでPDFファイルを作成する関数Function2を追加します。

関数のテンプレートを選択します。Http Triggerを選択して［追加］をクリックします。

Azure Blob StorageとDioDocs for PDFを使うコードを追加

Azure Blob Storageの出力バインドを設定するコードおよびDioDocs for PDFを使用してPDFファイルを作成するコードを追加して、Function2を以下のように更新します。

[Function("Function2")]
public async Task<UploadOutput> Run([HttpTrigger(AuthorizationLevel.Function, "get", "post")] HttpRequest req)
{
    _logger.LogInformation("C# HTTP trigger function processed a request.");

    string? name = req.Query["name"];

    string requestBody = await new StreamReader(req.Body).ReadToEndAsync();
    dynamic? data = JsonConvert.DeserializeObject(requestBody);
    name = name ?? data?.name;

    string Message = string.IsNullOrEmpty(name)
        ? "Hello, World!!"
        : $"Hello, {name}!!";

    MemoryStream outputfile = new();
    GcPdfDocument doc = new GcPdfDocument();
    GcPdfGraphics g = doc.NewPage().Graphics;

    g.DrawString(Message,
        new TextFormat() { Font = StandardFonts.Helvetica, FontSize = 12 },
        new PointF(72, 72));

    doc.Save(outputfile, false);

    byte[]? FileData = outputfile.ToArray();

    return new UploadOutput()
    {
        HttpResponse = new OkObjectResult("PDF File Uploaded."),
        OutPutFile = FileData
    };

}

public class UploadOutput
{
    [HttpResult]
    public required IActionResult HttpResponse { get; set; }

    [BlobOutput("output/result.pdf", Connection = "AzureWebJobsStorage")]
    public byte[]? OutPutFile { get; set; }
}

先程と同じように、DioDocs for PDFで作成したPDFファイルをAzure Blob Storageに保存するための出力バインディングをUploadOutputクラス内でBlobOutput属性で定義します。そして関数Function2がUploadOutputオブジェクトを返すように設定しています。

デバッグ実行で確認

今回はAzure Functionアプリケーションの関数で作成するExcelとPDFファイルの出力先として、関数の出力バインドで設定しているAzure Blob Storageを使用しています。ローカルでの確認にはAzurite エミュレーターを使用します。

Visual Studioのソリューションエクスプローラーから「ストレージ Azurite エミュレーター (ローカル)」を右クリックして表示されるメニューから［Azure Storage Explorerを開く］を選択します。

Azure Storage ExplorerではExcelとPDFファイルを出力するBLOBコンテナとして新しく「output」を作成しておきます。これで準備は完了です。

作成したAzure Functionsアプリケーションをローカルでデバッグ実行して確認します。Visual Studioからデバッグ実行すると、Windowsターミナルで以下のように表示されます。

アプリケーションに含まれる関数のURLはhttp://localhost:7145/api/Function1、http://localhost:7145/api/Function2となっています。それぞれURLにクエリパラメータと文字列?name=DioDocs for Excelと?name=DioDocs for PDFを追加して、それぞれの関数をブラウザで実行します。