今回は独立行政法人情報処理推進機構が公開した「DX動向2024」の内容について気になったデータをピックアップしてご紹介していきます。
はじめに
独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、戦略・技術・人材の視点から日本企業におけるDXの取組とその成果、技術利活用、人材育成などについて調査した結果をまとめた「DX動向2024」を2024年6月27日に公開しました。
2018年に経済産業省が「DXレポート」を公開して以来、DX(デジタルトランスフォーメーション)は多くの業界で話題となり、競争力を維持するための重要な鍵として推進する企業が増えています。
IPAはこれまでDXの状況や課題等について調査し、その結果を関連する技術解説などを加えて、「DX白書2021」「DX白書2023」として取りまとめ、公表してきましたが、今回公開された「DX動向2024」はそのDX白書を引き継ぎ、「戦略」「技術」「人材」の視点から日本の企業におけるDXの取組・評価・成果や技術利活用、人材の育成などに関する調査結果をDX白書の調査との経年変化を含めて分析したものです。
本記事ではこの「DX動向2024」の中から気になったデータをピックアップしてご紹介していきます。
DXの取組と成果の状況
まずはDXの取組状況についての状況です。DXに取組んでいる企業の割合は年々増加しており、2023年度は「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」と回答した企業の割合は2022年度調査の米国の値を超えました。
業種別に見ると「金融業・保険業」では取組が非常に進んでいる一方で「サービス業」の取組は遅れているようです。

続いてDXの成果の状況です。「DXの取組状況」で「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取組んでいる」「部署ごとに個別でDXに取組んでいる」と回答した企業が対象です。
こちらも年々成果を上げている企業が増えています。また、業種別ではDXの取組が進んでいる「金融業・保険業」が変わらずトップですが、取組が遅れている「サービス業」が成果の面では次いで高い結果になっています。

システム内製化とDXの成果の関係
「システム内製化」はコストを削減しつつ柔軟かつスピーディな開発が実現できるので、DX推進のための手段として注目されています。
今回の調査で「事業戦略やITシステムに適用しているソーシング手段」について尋ねた結果、いずれの対象事業・システムにおいても「内製による自社開発」の回答が増加傾向となっていました。特に「アジリティ(機敏性)を重視するシステム(短期かつ継続的にリリースするシステム)」は+10.9%、「低コストであることを重視して導入するシステム」は+10.0%と大きく増加しています。

また、システム内製化の状況については、DXに取組んでいる企業ほど内製化を進めている傾向がありました。さらにDXの成果が出ている企業においても「内製化を進めている」の回答割合が高い傾向にあり、システム内製化がDXを成功に導く有効な手段であると言えそうです。

一方でシステム内製化を進めるにあたっての課題について、「人材の確保や育成が難しい」と回答する企業が非常に多い結果となっていました。人材不足はDX推進全般の大きな課題ですが、システム内製化においても同様の課題があるようです。

DX推進の人材の確保状況
前述のとおり、DXを推進する人材の確保は重要な課題です。DXを推進する人材の確保状況についても調査が行われています。2021年度調査と比較して人材の「量」「質」、共に「大幅に不足している」と回答する企業の増加が著しく、人材不足が深刻化していることがわかります。DXが推進していく中で、不足感が増してきていることや、社会全体として人手不足が進んでいることも影響しているようです。

人材の「量」の確保の状況について、業種別に見ると「製造業」「サービス業」で「大幅に不足している」の回答割合が多く、「どのような人材が不足しているか」、という問いには、DXの目的設定から導入、導入後の効果検証までを関係者をコーディネートしながら一気通貫して推進する「ビジネスアーキテクト」が一番不足しており、次いで業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う「サイバーセキュリティ」が不足しています。

ではDXを推進する人材はどのように獲得しているのでしょうか。DXの成果別に見てみると、DXの成果が出ている企業で最も多いのは「社内人材の育成」でしたが、一方でDXの成果が出ていない企業で最も多いのも「社内人材の育成」と、同じ手法をとっても成果が出ている企業と出ていない企業の差が大きいようでした。
また、DXを推進する人材の育成にあたっての課題としては、「スキル向上・獲得へのマインドシフト」が2022年度の調査と同じで最も回答率が高く、次に高い「時間確保のための支援(現業のリソース支援など)」は2022年度よりも回答する企業が多くなっていました。いずれも難しい課題ですが、DX推進に向けての企業文化や風土の醸成の必要性を改めて感じました。

さいごに
今回はIPAが公開した「DX動向2024」の中から気になったデータをピックアップしてご紹介しました。DXを推進する企業、成果を上げている企業、いずれも年々増加しており、コストを削減しつつ、柔軟かつスピーディな開発ができる「システム内製化」を推進することでDXの成果を上げている企業が多いことがわかりました。
また、一方でDX推進のための人材確保は深刻な課題であり、DXの成功の大きな妨げとなっています。
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